2019年9月23日(月)にデンタルダイヤモンド社主催の小出馨教授(日本歯科大学新潟歯学部)の出版記念講演会「臨床が楽しくなる咬合治療-咬合と顎関節の診断と治療をわかりやすく-」に参加しました。小出教授は私のバイブルであるPeter E. Dawson著「Functional Occlusion : from TMJ to Smile Design」を監訳した先生です。
今回の講演会ではオーラルフレイルの概論から始まり、咬合が全身に与える影響、顎関節の病態診断および病態ごとの効果的なマニピュレーション、咬合採得基準と下顎位の診断、適切な咬合器で診査診断方法、そしてオーラルフレイル予防としての舌トレーニングについて講義をしていただきました。
人生100年時代を迎え、口腔機能の衰えであるオーラルフレイルへの注目が集まっています。そして歯科医療はう蝕治療や歯周病治療だけでなく、咀嚼や嚥下といった顎口腔系の機能を維持するための咬合治療まで強く求められるようになっています。
ではオーラルフレイルとはどういったものなのでしょうか?以下の6つの条件のうち3つを満たすとオーラルフレイルと考えられます。
1. 残存歯が20本未満
2. 咬む力が弱い
3. 口を巧みに動かせない
4. 舌の力が弱い
5. かたい食品が食べづらい
6. むせやすい
研究によると介護不要な65歳以上の方のうち上記3つ該当する方々は一つも当てはまらない方たちと比較し、4年以内の死亡率が2.1倍、介護認定率が2.4倍以上となっています。咬合に関する研究では、咬合治療により咬合の不調和が改善されると脳への血流が改善され認知症が予防されると報告されています。また義歯を使わないことで約2倍認知症になりやすかったり、約2.5倍転倒しやすくなると考えられています。義歯のメリットは食事を取ることはもちろんのこと、咬合の安定により認知症予防や転倒による寝たきり予防と考えられます。義歯がうまく使えていない方は是非ご相談いただければと思います。
オーラルフレイル予防としての舌トレーニングに関しては、舌トレーニングによるオーラルリハビリテーションにより1か月で舌圧が20%上昇したと報告されています。また舌を動かすことで首の筋肉までが動く結果としてリンパ節(全身に約800あるリンパ節のうち頚部に約200が集中)や副交感神経を刺激し、全身へプラスの作用があると考えられています。今後は舌トレーニングにより寝たきりや介護を可能な限り避け、健康寿命を延長することが歯科の役割としてより一層強く求められるでしょう。今後も最新の知見を得られるよう情報を収集し研鑽を積んでいきます。
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