2019年12月1日(日)に東京医科歯科大学で行われた歯周形成外科セミナー「小田茂のスーパーオペレーションテクニック ー角化歯肉をつくるー 」に参加しました。今回は、歯周形成外科(Periodondal Plastic Surgery:PPS)の中で特に歯肉移植術(遊離歯肉移植術 Free Gingival Graft:FGG、結合組織移植術 Connective Tissue Graf:CTG)に関する歴史的および理論的背景に関する知識をアップデートした後に、オレンジや豚骨を使用した実習を行いました。
通常、歯の清掃性や炎症の波及を防ぐ目的で、臨床的に硬く動かない歯ぐき(角化歯肉≒付着歯肉)が存在することが有利と考えられていました。しかし、現在までのエビデンスでは、プラークコントロールが十分に行われ、メンテナンスプログラムが確立し、定期的な来院が可能な場合は必ずしも角化歯肉が必要とは言えないと考えられています。逆に考えると、これらが難しい場合には角化歯肉をオペにより獲得する必要がある場合があります。
臨床でしばしば一部の歯の歯ぐきが強く下がる現象(歯肉退縮)がみられます。この原因には様々なものがあり、硬い歯ブラシを使用した強いブラッシング圧や局所的な炎症性病変、筋や小帯の高位付着、不適合補綴物、矯正治療、咬合病等があげられます。
これらの原因を可及的に除去した後に歯周形成外科を行います。歯肉退縮により露出した根の表面を覆うためには、根面被覆のために歯肉移植術を実施します。
実習では、歯肉移植術を成功させるために必要な手技を確認しました。まずはオレンジの皮を使い、メスを含めた歯周外科器具の選択から始まり、メスの動かし方(押し切り、引き切り)、移植に使用する遊離歯肉および結合組織の採取の仕方、さらに縫合による移植片の固定の仕方について確認しました。その後、豚の下顎骨を使い臨床に即した形で歯肉移植術を実施しました。豚の臼歯に歯肉退縮を人工的に再現し、切開線の設定法や部分層弁の作り方、隙間(死腔)なく移植片を縫合糸で固定する方法について実際に手を動かし確認しました。歯周病治療を専門にしている先生方に自分の手技を確認していただくことは大変勉強になりました。明日からの臨床に活かしていきます。その他、実際の臨床で活用できる術式についても確認しました。Trap door法、ランガー&ランガーテクニック、エンベロップテクニック、トンネル法、ロールフラップ法、パウチ移植法、インターポジション移植法など。
最後に、歯周病の新分類についても確認しました。これまでは慢性歯周炎と侵襲性歯周炎を分けていましたが、新分類であるAAP&EFP2017の分類では歯周炎に統一されました。また歯周病は重症度や生物学的特徴、喫煙や糖尿病のリスクファクターによって分類されます。歯肉退縮の分類もMillerの分類からCairoの分類という新分類へ変化していくようです。今後はこれらの新分類に関して知識を深めより適切に診断・治療ができるよう分類を活用していきます。
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