有病者歯科
有病者歯科の目的
- 疾患に配慮しながら安心安全の歯科診療を行うこと。
- 医科の先生方と連携をとりながら歯科診療を行うこと。
- ガイドラインやエビデンスが確立していない疾患に対して、現時点で可能な手段を用いて、臨床医として全力を尽くすこと。
皆様の中には様々な疾患を抱えて生活されている方もいらっしゃると思います。歯科治療の際、例えば高血圧治療中の方は血圧の変動や麻酔薬の選択に注意が必要です。また糖尿病や膠原病などは、特に感染に注意する必要があります。血液をサラサラにするお薬(抗血小板薬、抗凝固薬)や骨を強くするお薬(BP製剤)などは外科処置と相性が良くなく、処置の際は細心の注意が必要です。当院ではこのような場合でも安心して歯科治療を受けていただける体制を整えています。お口の中だけでなく全身に関することも含めて問診を行い、その疾患に配慮しながら歯科診療を行います。また必要に応じて、医科や口腔外科の先生方と連携を取りながら歯科診療を進めていきます。まずはお薬手帳を持参していただいて、全身のご病気や歯科治療に対するご不安な点に関してお話していただければと存じます。
シェーグレン症候群などの疾患やお薬の副作用、加齢に伴い口腔乾燥症(ドライマウス)が生じることがあります。お口が日常的に乾くと、舌や粘膜にヒリヒリとした痛みが出たり、味がわからなくなったり、入れ歯が外れやすくなったり、口臭が気になったりと様々な問題を引き起こします。様々な対応方法がございます。このようなお悩みも是非お気軽にご相談ください。
ステロイドによる副作用
「ステロイド歯痛」という言葉をご存知でしょうか?関節リウマチに代表される膠原病などを患った方々は、免疫抑制剤としてステロイドを服用している場合が多くあります。このステロイドには様々な副作用があり、患者さんたちは病気そのものだけでなく、ステロイドの副作用にも日々悩まされています。
副作用の研究と「ステロイド歯痛」
その副作用の一つとして、比較的痛みが強く、全顎的に生じる知覚過敏が存在することに気がつきました。しかし、このステロイドの副作用と考えられる知覚過敏は、製薬会社に問い合わせてみました(2017年冬)が、どうやら正式には副作用として認められておらず、また学術データベースにも存在しないものでした。調べていくと、平成25年に東北大学の博士論文「副腎皮質ステロイド剤投与による象牙質知覚過敏様歯痛に関する研究-その実態調査とメカニズムの検討について-」に出会いました。さらにこの研究をまとめたものが、平成29年春の日本歯科保存学会にて「ステロイド療法による象牙質知覚過敏症様歯痛の発症に関する統計学的検討」という形で東北大学より発表されていました。この研究は東北大学病院2年間220名によるデータで臨床的に高いエビデンスレベルを有していると考えられます。この研究でステロイドによる象牙質知覚過敏様歯痛を「ステロイド歯痛」と命名しています。
研究の要点
この研究の要点をまとめると、
- ステロイド歯痛は、ステロイド投与患者さんの17.7%に認められ、特にステロイドパルス療法を受けた患者さんで多く認められた。
- ステロイドの投与量が増えると痛み(VAS値)は強まった。
- ステロイドの減量・中止に伴い、ステロイド歯痛も減少・消失した。
- ステロイド歯痛は、多数歯に生じ、31%の患者さんでは耐え難い痛みであった。また、痛みのトリガーは、冷水痛(84%)やエアー痛(32%)、温水痛(24%)であった。
- 通常の知覚過敏処置を行った場合、痛みは減少するが効果は一時的で、処置後1〜7日後には症状は再発した。
今はまだ明確な治療法はありません。免疫抑制剤としてのステロイドは簡単に減量・中止できる薬ではないことを考慮すると、対症療法を行うしかないのが現状です。当院では、このようなガイドラインやエビデンスが確立していない症状に対しても、現時点で可能な手段を用いて、臨床医として全力を尽くしたいと考えています。
歯科も科学(Science)の一分野です。日進月歩で研究は進み、新しい治療法や機器、材料が開発されています。当院では、様々な情報を収集し、それを実際の臨床に活用できるようトレーニングを積み、より良い予後となる治療を患者さんに提供できるよう努めています。
難病受給者証と歯科治療について
以下の特定医療費(指定難病)受給者証と歯科治療に関するブログを参照ください。
→ブログ『(指定難病)受給者証を使用することはできますか?』